09-10 2025 France et Belgium

 

秋の買付の旅を終えて

秋のヨーロッパを巡る買い付けを終え、日本に戻ってから2週間ほどが過ぎました。
今年の9月は「40年ぶりの寒さ」と言われたパリ。
日中はそれほどでもないのですが、早朝から動き出す私の仕事では、6℃の空気の中、毎朝の買い付けが続きました。

10月に入るころ、南仏へ移動。
その後パリに戻ると、少し寒さも落ち着いていたように思います。
そんな寒い秋の買い付けだったので、日本に戻って“最後の夏日”を少し期待していたのですが、そのような日もなく、気がつけばすっかり秋の気配。日暮れの早さに季節の移ろいを感じていました。

フランスの秋は、実りの季節。
市場にはシャンピニオン(きのこ)が並び、葡萄や無花果、そしてみかん(フランスのものは甘くてみずみずしい!)。
ミラベルもまだ少し見かけました。
そして、今回初めて食べたかもしれないレーヌクロード!

日本では果物が少し贅沢品になりつつありますが、さすが農業国フランス。マルシェや八百屋で手に取りやすい価格で販売されていて、新鮮な果物や野菜を毎日食べることができます。
どれも甘くて香り豊かで、「なんて贅沢なんだろう」と毎回思います。

最近は円安の影響もあり、節約も兼ねて友人宅で一緒に食事をすることが増えました。
マルシェで買った野菜をグリエしたり、旬のジロール茸をバターでさっとソテーしたり、ジャガイモでグラタンを焼いたり。キッチンが秋の森の香りに包まれるような。

ビストロの食事にも惹かれますが、今は節約モード。気心知れた友人と一緒に季節の食材を調理して、買い付けた器に盛り付けてみたり。
そんな時間は楽しくて、特別で、あたたかい記憶として残ります。

買い付けの旅はいつも、移動と作業の連続。
でもそんな中で、料理をしている時間がふとリフレッシュになっていたり、気分を切り替えるスイッチになっていたり。
体力勝負の仕事だからこそ、しっかり食べて、次の日の活力にする。

「おいしい時間」は、やはり大切。

無花果で作ったペペロンチーノはユニークだった。
パスタなのに、どこかデザートのような。
フランスの無花果は小ぶりで、甘味と風味がぎゅっと凝縮されているからこその味わいなのかもしれません。

デザートは、レーヌクロードを生地で包んで焼き上げたアンジェ地方のお菓子(写真のもの)。
日本ではなかなか見かけない果実ですが、フランスでは夏の終わりから秋のはじめに旬を迎え、マルシェに並びます。
焼くと甘味と酸味がひろがって、とても美味しいのです。

おなかを満たし、体もあたたまり、翌日の買い付けへ。
そんなふうにして、今年の秋の旅も過ぎていきました。

(つづく)

 
kanako yamane