Belgium 09.2025 (vol. 1)
ベルギー 秋の買付け旅(前編)
秋の買付けは、この4年ほど、必ずベルギーに行くようになった。
お目当ては蚤の市やブティック、チョコレート屋、屋台で食べる魚介やムールとフリット。
新しい場所の開拓はほとんどせず、だいたい同じコースを巡ります。もうすっかり定番のコース。
(もともと新しい場所を開拓するよりも、気に入った場所へ何度も訪れる性格。)
ミュゼだけは、ベルギーでは今のところ毎回一か所、初めての場所を訪れるようにしています。
パリから列車に乗り込み、まずは早朝からはじまっている蚤の市へ。
大きな広場に多くの業者が店を広げていますが、欲しいものがひとつでも見つかればラッキー。
そんな蚤の市だから、はじめから大きな期待はしません。
それでも、時々運よく欲しいものに出会えると、驚くくらい嬉しい気持ちに。(初めから期待していないからこそ、喜びは大きいのです。)
隅からすみまで、目を凝らし探し続けるけれど、やはり惹かれるものには出逢えないなと諦めた頃、ハッと目に留まった茶器。わー、やった!と。
(そのくらい出会いの確率が低い蚤の市だから、運試しのような場所。笑)
拾い上げたのは、イギリス・ウィリアムスミス社の古い茶器。
1822年から1855年までのわずか30年ほどしか存在しなかった窯のもの。
この窯の面白いところは、当時大流行していたウェッジウッドのスタイルに挑戦し、なんとバックスタンプまでウエッジウッドの印を作り押してしまったこと。
その作風は非常に精巧で、V&A博物館も誤って展示してしまったという逸話が残されています。
まだ商標保護の仕組みが途上だった時代の、ヨーロッパ陶磁器市場を物語るユニークなエピソード。
と、話はそれましたが、出逢った貴重な茶器は、シックなブラックを基調に、淡いピンク、黄色、ブルーが加わったロマンチックな雰囲気。
手に取ると、静かな時間の中に華やぎを添えるような美しさがあります。
そんな運試しの蚤の市を楽しんだあとは、決まったカフェでいつものショコラショを。
朝は冷えるから、ボルを持つ手もじんわりと温まります。
ホットミルクに添えられた削りチョコを自分で溶かしながら飲むのは、ベルギー式なのかしら。
パリで飲むショコラショとは少し違います。
体も温まり、次に向かうのはお気に入りの古着ブティック。
センスの良い店主たちのセレクトは毎回楽しみで、向かいはじめると自然と足早に。
洋服選びも楽しい。ときめく気持ちは続きっぱなし。だからつい時間をわすれて長居をしてしまうのです。
そして、あれこれと好きなものを選びながら、ふと我に返る。
自分の店を訪ねてくださる皆さんも、こんな気持ちでゆっくり楽しんでくださっているのかな。
そうだったら嬉しいし、そんな風に過ごしてもらえる店でありたいと、SASHIIROを想います。
今回選んだ洋服は、1970年代のインドコットンのコートやシルクのブラウス、アールヌーヴォーのボタンなど、手仕事や時代の痕跡を感じるものたち。
美しいものばかり。
それらを大切に背負い、次へ向かいます。
旅はつづく。
*この週末のオンライン更新について
ベルギ―で出逢ったウィリアムスミス社の茶器と、1970年代のインディアンコットンのコートを、今週末(日曜日)にSASHIIROオンラインにてご紹介予定です。
どちらも、ベルギーの秋の空気を閉じ込めたような品々。
旅の記憶や余韻をそのままに、お届けできたら嬉しいです。ぜひご覧ください。